Waltz for Debby(ビル・エヴァンス)
あまりにも有名すぎて、私がここでなにか語ることもない気がしますが、やはり大好きな1枚です。
スコット・ラファロとの共演
ベースはスコット・ラファロです。
エヴァンスは自己のトリオで、ラファロの死後、チャック・イスラエルや、エディ・ゴメスらをベースに迎えるのですが、このラファロとのトリオが一番だ、という声が多いです。私もそう感じてしまいます。
ですが、ラファロの良さもさることながら、エヴァンス自身も1958年にマイルス・デイビスのグループに参加した直後に組んだトリオでの演奏です。エヴァンス自身も、アイデアにあふれた絶頂期だったのではないのかな、と思います。
録音は、ニューヨークの有名なジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードで行われました。ジャズクラブなので、騒々しいわけではないですが、客席のざわめきやグラスの音などがかすかに聞えてきます。そんな雰囲気も、私がこの一枚が好きな理由でもあります。全く音楽とは関係ないのですが…。
リズムに乗り、歌い上げるエヴァンス
特に私が好きな演奏は、「My Romance」です。
リズムに乗って、グルーブして、歌い上げる。そのエヴァンスの素晴らしさが表れています。
エヴァンスには沢山の魅力があります。
その音遣いの素晴らしさを上げる人は沢山います。
私もそう思いますが、その音使い以上に、リズムというか、フレージングというか、「歌い方」というか、それが私にとって一番のエヴァンスの魅力なんです。
タイトル曲の「waltz for Debby」も始まりはとても美しい演奏ですが、三拍子からフォービートに変わった後が大好きです。リズムに乗って歌い上げるエヴァンス、素晴らしいです。
エヴァンスと「ビ・バップ」
もうちょっと音楽的なことも書いてみますね。
エバンスはマイルス・デイビスの『Kind of Blue』に参加していて、ライナーノーツも書いています。『Kind of Blue』はモードジャズを広めるきっかけになった録音とされていて、それもあってか、エバンスはモードジャズ黎明期の一人と言われることもあります。
確かにそういう側面もあるとは思いますが、エバンスの生涯にわたる演奏を聴くと、エバンスはあくまでもビバップに根差したピアニストだと感じます。
私がまだ若く、ジャズを聴き始めて1~2年のころにエバンスを聴いた時、「何をやっているのか分からない」と感じたのを覚えています。
今聴くと、さすがに「何やっているか分からない」状態ではないですが、その当時の私の感覚は今でも理解できます。
バップに根差しているのに、エバンスならではのフレージングや音使いが、若いころの私にはよく分からなくて、難解に聞こえたのでしょう。