ジャズが聴こえる

私の好きなジャズレコード、ミュージシャンの紹介や、ジャズにまつわる思い出話などを綴っていきます。

京都三条河原町、ジャズ喫茶「BIG BOY」の日々~レコード・ノート~

1980年代、私が学生時代にアルバイトをしていた、京都三条河原町近くのジャズ喫茶「BIG BOY」での日々を綴ります。


果たして「レコード・ノート」と言っていいのか分かりません。
特に名前はなかったノートでしたが、何のレコードをかけたか記録しておくノートが、「BIG BOY」にはありました。

「BIG BOY」ではレコードをかけるのはホールの仕事でした。また、お客さんから時々レコードのリクエストがあって、それを受け付けるのもホールでした。
だから、ホールはみな割とやりたがったのです。自分の好きなレコードがかけれるからです。
一方で、今日はあいつがホールだけど何からかけるのかな、きっとあれをかけるぞ、みたいな従業員同士の楽しみもありました。

私の手元には1冊、このレコードノートが残っています。今、見返すと、ジャズに満たされた「BIG BOY」の様子が思い出されます。

ある日のノートは、こんな感じです。

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レコードノート

ページの上に書いてある「くま」「姉」などは、その日のバイトメンバー、左ページが早番、右ページが遅番、これは12/5の給料日のページです。

お客さんからリクエストされたレコードの頭には「R」と書かれています。この日はリクエストは少なめです。
レコードに対するスタッフの気ままなコメントや、仕事中のぼやきなども書き込まれています。

私が初めてレコードを選ばせてもらったのは、まだ働き出して2~3日ぐらいだったと思います。
ジャズを知りたくて働き出したくらいですから、まだ大してミュージシャンの名前も、レコードの名前も知りませんでした。
レコード選んでいいよ、と言われて困ってしまっいましたが、何となく選んだのが、アーチー・シェップのレコードでした。
バイト仲間はみな「え~!!」と驚きました。そんなに驚かれた私が、驚くくらいでした。
確かに今にして思うと、いきなりシェップは驚くと思います。その時の私は、シェップなどそもそも知らなかったし、聴いてみたくて何となく選んだだけでした。
残念ながらレコード名は覚えてなく、どういう感じだったかも覚えていなです。覚えられるわけがないです。その時はまだジャズのアドリブが、全部同じように聞こえていたレベルだったのだから。

最初はお客さんのリクエストを聞くのもいやでした。
ミュージシャンやレコードの名は全然知らないから、ボソボソ言われたり早口で言われたりすると、知らないだけに聞き取ることができないのです。だからホール担当の時は少し緊張しました。

ある時お客さんから、「〇×▽の、☆◎□をかけてくれ」と言われて、良く聞き取れず、他のスタッフに聞きにいったことがあります。
「ことるれーんの、ぶるーれいんって言われたけど、ある?」

こんな私が、今は偉そうに、コルトレーンのおすすめにブルートレインを紹介している訳です。

こうして思い返すと、「BIG BOY」にいた期間は1年に満たなかったけど、「BIG BOY」で私はジャズを知ったんだな、と思います。