ジャズが聴こえる

私の好きなジャズレコード、ミュージシャンの紹介や、ジャズにまつわる思い出話などを綴っていきます。

The Great Pretender(レスター・ボウイ)

Great Pretender

今、どれくらいの人がレスター・ボウイのことを知っているでしょうか。私の世代だと、かなりインパクトを持って記憶しているジャズファンも多いかと思います。
アバンギャルドなイメージが強いレスター・ボウイですが、ECMレーベルから出されたこのアルバムは、聴き心地もよく、でもレスター・ボウイの良さも存分に発揮されています。

『The Great Pretender』ECM 1981年)

Lester Bowie(tp)
Hamiet Bluiett(b-sax)
Donald Smith(pf,org)
Fred Williams(b)
Phillip Wilson(ds)
Fontella Bass(vo)
David Peaston(vo)

【収録曲】
#1 The Great Pretender
#2 It's Howdy Doody Time
#3 When the Doom (Moon) Comes Over the Mountain
#4 Rios Negroes
#5 Rose Drop
#6 Oh, How the Ghost Sings

知ったかぶって書き出してしまいましたが、私はそれほどレスター・ボウイを聴きまくったわけでもありません。とにかく、このアルバムが好きなのです。いえ、もちろんレスター・ボウイも好きですよ。
とにかく、このアルバムはお勧めしたいですし、忘れ去られてほしくない良いアルバムだと思います。

ECMレーベルというと、キース・ジャレットの作品が多数リリースされているので有名です。独特の透明感のあるサウンドがあり、選曲やアルバムタイトル、ジャケットも、表現として妥当かどうかわかりませんが、親しみやすいものが多いですね。
変な表現をしましたが、私はそんなECMが大好きです。アーティストをプロデュースする力が素晴らしいのでしょう。

レスター・ボウイもアート・アンサンブル・オブ・シカゴでの活動に象徴されるような、アバンギャルド演奏家と思われる人も多いかと思います。私もそうでした。

例えばブリジット・フォンテーヌの『ラジオのように』に参加した演奏などです。このアルバムもインパクトがあって、記憶にある人も多いのではないでしょうか。
ちなみにこんなジャケットです。思い出した人もいるのでは?

ラジオのように

そういうレスター・ボウイが、「The Great Pretender」というプラターズのポピュラーな曲を演奏し、アルバムタイトルにしてリリースしたわけです。
それにECMサウンドが相まって、難解な演奏というレスター・ボウイのイメージが薄れています。つまり、とても聴きやすいアルバムなんですね。私もこれで、はまってしまいました。

聴きやすいアルバムですが、トランペットという楽器を様々な演奏法を駆使して、独自のサウンド、歌い方を聞かせてくれるところは、レスター・ボウイそのものです。
もっともレスター・ボウイ自身の演奏は、「アバンギャルド」といわれることが多いですが、ルイ・アームストロングを敬愛していたというように、実際は伝統的なプレイが基本になっていると感じます。
この『The Great Pretender』というアルバムを聴くと、様々な表現手法をとって前衛的なプレイも聴かせてくれるのですが、それだけではない、伝統的なジャズ・ミュージックに根差している、と感じさせてくれます。

ちなみにこのアルバムを知ったのは、私が学生時代、京都のジャズ喫茶「BIG BOY」でアルバイトをしていた時でした。
店の同僚だった、モトヤス君に教えてもらったのです。仕事が終わったあと、閉店した店に居残って、モトヤス君にこのアルバムを聴かせてもらったのです。
それ以来、これまでずっと、私の愛聴盤です。

※モトヤス君と「BIG BOY」のことは以下の記事に書いてあります。 

my-jazz.hatenablog.com