ジャズが聴こえる

私の好きなジャズレコード、ミュージシャンの紹介や、ジャズにまつわる思い出話などを綴っていきます。

京都三条河原町、ジャズ喫茶「BIG BOY」の日々~オーダーサイン~

1980年代、私が学生時代にアルバイトをしていた、京都三条河原町近くのジャズ喫茶「BIG BOY」での日々を綴ります。


「BIG BOY」でのアルバイトは、ホールとカウンターに担当が分かれていました。
当日その日のメンバーによって、「今日、俺、ホールいくわ」みたいに決まっていったのです。

一応カウンターは、簡単ものですが、カクテルやフードも作ります。だから、それが作れる者になりますが、いずれも簡単なフード・ドリンクなので、私でもすぐにカウンターに入ることができました。
ホールは、オーダーを聞き、テーブルへ上げ下げして、会計をすることと、レコードを選んでかけることが仕事でした。

「BIG BOY」ではホールとカウンターの間に、オーダーに関しての決めごとがりました。すぐにオーダーされたものを出せるように、お客さんのオーダーを聞きながら、ホールからカウンターへ、こっそり手でサインを出すのです。
グループ客の中の一人が、なかなかオーダーが決まらない時など、サインで先に注文を送っていたお客さんには、先にオーダーしたものが届いたりもしました。
注文を聞いているはずの店員はずっとそばに立って、まだオーダーを聞いているのに、何故か別の店員がオーダーを届けにきてびっくりされたこともあります。

サインは覚えやすく、よくできていました。
一番多くオーダーが入るコーヒーは、親指を立てる「グッジョブ」みたいなサインです。アメリカンは逆に親指を下げます。カフェオレは「オレ=俺」だから親指で自分を指し、ミルクは“おっぱい”だから胸を指します。紅茶は親指と人差し指でL字型を作ります。
それらがアイスになったら、親指が人差し指になります。例えば、アイス・オレは人差し指で自分を指すのです。アイスティーは人差し指を上に向けて親指とL字型を作りました。

フードやお酒のメニューには、あまりサインは決まっていなかったです。
その中でもスクリュードライバーは決まっていて、親指と人差し指でOKみたいに輪を作ってぐるぐる回しました。指で輪作るのはオレンジの「O(オー)」を表していて、それだけだとオレンジジュース、それをぐるぐる回すとスクリュードライバーというわけです。

フードではピザだけ決まっていました。なぜが握りこぶしを口に突っ込むのです。お客さんに見られたら「何やってんだ」と思われ、やるのに躊躇してしまいます。
あまり出ないメニューだから、ピザの注文に当たったホール担当は不運だった、ということです。

沢山のお客さんが来店する週末などは、このサインは特に便利でした。
今でこそファミレスや居酒屋などでも「ハンディターミナル」が当たり前に利用されていますが、そんなものがなかった時代に、こういう工夫をみんなでしていたのです。
その後も様々な飲食店でアルバイトをしたが、「BIG BOY」みたいにサインを使ってオーダーを伝えるような店に出会ったことはありませんでした。