ジャズが聴こえる

私の好きなジャズレコード、ミュージシャンの紹介や、ジャズにまつわる思い出話などを綴っていきます。

京都三条河原町、ジャズ喫茶「BIG BOY」の日々~エルビンまさかのシャケ行為~

1980年代、私が学生時代にアルバイトをしていた、京都三条河原町近くのジャズ喫茶「BIG BOY」での日々を綴ります。


クリスマスイブに、エルビン・ジョーンズ京都市内でライブをおこなう、という情報が流れ「BIG BOY」内は色めき立ちました。
もちろん、みんな大好きで憧れているドラマーです。何しろあのコルトレーンと一緒に活動をともにしていたのです。

まず、問題になったのはバイトのシフトでした。ライブの日のシフトに入ってしまえば、当然ライブにはいけません。バイトメンバー内での落書き帳のような「せんきれ帳」へ、書き込みが相次ぎました。その日はライブに行きたい、行かせてくれアピールが始まったのです。

そもそもシフトは誰が決めていたのか、今一つ覚えていません。
この「BIG BOY」に関する一連のエッセイでは、あまり登場せずに影が薄いのですが、「ダンさん」と呼ばれていた店長なる存在はいたので、ダンさんがシフトを組んでいるたのだとは思いますが、長くいる年長のアルバイトが中心に考えて、ダンさんが承認する感じだった気もします。

みな様々な理由をつけてアピールしました。そのアピール合戦の後、ともかくライブの日のシフトは決定しました。
私もライブに行きたかったのですが、一番新入りだし、まだまだジャズも詳しくなく、他のスタッフのほうが何倍も行きたいだろうから、ライブは諦めてシフトに入るつもりでいました。
ところが、サプライズ的に私はシフトから外され、チケットをプレゼントされたのです。私の誕生日が近かったことがあり、「行きたい、行きたい!」と激しく主張していなかった私を、あえてライブに行くメンバーに加えてくれたのです。これはとても嬉しいプレゼントでした。
手元にある「せんきれ帳」によると、ライブに行ったのは私とタモさん、クマさんの三人でした。

ライブは確か岩倉かどこか、とにかく市中心部から外れたライブハウスで行われました。
ライブの内容は覚えていません。ただ、演奏が終わったあと、サイン会があったことを覚えています。そこで、自分たちが「BIG BOY」というジャズ喫茶の店員だという話をしたのです。するとエルビンは興味を持ってくれて、私たちの店に行ってみたいと言ってくれたのです。
これには驚いて、みな喜びました。エルビンが店に来てくれれば、今日、泣く泣くシフトに入ってライブに来れなかったメンバーへ、最高のプレゼントになります。
会話のやり取りは、日本人の奥様、ケイコ夫人が間にたってくれました。

そして、その日のライブの後、私が「せんきれ帳」書いた内容が以下のものです。

はい!いってまいりました。エルビンいってまいりました。
こう本格的(?)なライブは初めてでしたが、すっごいパワーに圧倒されてしまった。
なんか、こむつかしいことはわからないけど、パンパンパパーンとたいこの皮がやぶれんばかり。
まっかなズボンにガウンにたいのをはおってね。
そんでもって、すごく楽しそうに、うんうんHappyつうのね。
いやー、高橋さん(多分サックスの高橋知己さん)も顔、真っ赤にして。
で、27日PM6:00、エルビン夫妻来店です。
ほんと、気さくな人ね。ばりばりよかった。
10:30に始まって、4曲、そしてクリスマスソング、12:00ごろ終了、サイン会でした。1時過ぎ、タモさんと店を出たら、雪がちらちら。バド夫妻からのマフラーをして、ほんと、美しい、美しいイブでした。

興奮しているのは分かりますが、何だか幼くて恥ずかしいですね。
ライブが10:30からとあるけれど、昼だったのでしょうか。ちょっと記憶がありません。夜だとしたら、だいぶ遅い時間です。
ともあれ、三日後の27日にエルビンが来店してくれることになり、その期待に店は大変な盛り上がりをみせました。

エルビン来店の知らせは、常連さんたちにも伝えられました。当時は今みたいに、スマホSNSもないから、電話連絡、もしくは直接会って、連絡が回せる人には回してもらいました。
そして当日、サインをもらおうとレコードや色紙を片手にスタッフや常連さんが「BIG BOY」に集まって、エルビンの登場を待ち構えたのです。

ところが、約束の時間を過ぎても来ないのです。
ミュージシャンだから遅れることもある、と待っていましたが、来ません。
どれくらい待ったでしょうか。常連さんたちも、一人また一人と席を立っていきました。

なにか、やり取りの中で誤解があったのかもしれませんが、この日のことは「エルビン、まさかのシャケ行為」として、「BIG BOY」の歴史に刻まれることになったのです。

※「シャケ行為」についてはこちらをご覧ください。

my-jazz.hatenablog.com