ジャズが聴こえる

私の好きなジャズレコード、ミュージシャンの紹介や、ジャズにまつわる思い出話などを綴っていきます。

Somewhere Before(キース・ジャレット)

サムホエア・ビフォー

キース・ジャレットが23歳の時、1968年の演奏です。
チャールス・ロイドのバンドに在籍していたか、やめるか、時期的にはそのあたりの録音のようですね。(アバウトで申し訳ないです…)
その後1970年にマイルス・デイビスのバンドに参加、1975年にケルンコンサートを録音、1983年に以後の活動を方向付ける『Standards, Vol. 1』を録音します。

『Somewhere Before』(Vortex Records 1969年)

Keith Jarrett(pf)
Charlie Haden(b)
Paul Motian(ds)

【収録曲】
#1 My Back Pages
#2 Pretty Ballad
#3 Moving Soon
#4 Somewhere Before
#5 New Rag
#6 A Moment for Tears
#7 Pouts' Over
#8 Dedicated to You
#9 Old Rag

 1曲目の「My Back Pages」で、いきなりガツンとやられます。ボブ・ディランの曲です。ピアノの演奏法、装飾音符の使い方、タイム感、どれも素晴らしく、キースそのものです。
オリジナルのボブ・ディランの演奏は、このキースの演奏を聴いた後に、オリジナルも聴きたいと思って聴きました。とても素朴でシンプルな曲です。
以後、スタンダーズトリオでの演奏、ソロピアノでの演奏でも、とてもシンプルな曲を、キースは大変美しく、表情豊かに演奏します。複雑なコード進行の曲ではなく、シンプルな曲を素材にしてこそ、キースの真骨頂を発揮する気がします。

そのほかの曲も、様々なスタイルの曲を聴くことができます。
後年のキースにつながる演奏を聴くことができます。

私が最初に、大まかなその後のキースの活動歴を書いたのは、この『Somewhere Before』に、その後も変わることのないキースの音楽の原点を、たくさん聴けるように思えるからです。
ソロやトリオでのスタンダードの演奏活動を続けていくのですが、23歳の演奏に、すでにしっかりキースの演奏の神髄が詰め込まれている、そんな感じがするのです。

逆に言えば、その人のスタイルというのは20代前半で、その土台は出来上がっているのだ、ということでしょうか。
キースみたいな凄い人と比べるのは申し訳ないのですが、私も、20代前半のころに、ものの考え方や、好み、志向が決まり、それ以後は変化があったとしても、それほど大きな転換はなかった気がするのです。
そんなことも、23歳のキースの演奏を聴くと考えてしまいます。