ジャズが聴こえる

私の好きなジャズレコード、ミュージシャンの紹介や、ジャズにまつわる思い出話などを綴っていきます。

The Köln Concert(キース・ジャレット)

ケルン・コンサート

私の大好きなミュージシャンの一人です。
耳に心地よいサウンドの作品が目立つこと、クラシックも演奏したCDも出していること、ビバップからは遠いイメージの演奏スタイルであることからでしょうか、好きな人は好きですが、興味のない人もいます。

そのキースのアルバムでまず、超有名、お勧めはこれ。

『ザ・ケルン・コンサート』(ECM 1064:1975年)
Keith Jarrett(pf)

知ってる人は「あぁ、これね」と言うでしょう。これをまず紹介した時点で、まずそれなのか、と異を唱えるジャズファンもいるかもしれません。それだけ、賛否(好き嫌い?)が分かれるCDです。
私が若いころJAZZ喫茶でバイトしていた時も、嫌いな人も割といて、ソロピアノということもあり、リクエストがない限りかけることはなかったです。

ライブ演奏なのですが、トータル60分以上、ソロピアノによる即興演奏です。
ジャズによくあるスタンダードを元にした即興演奏ではなく、完全なキースのオリジナル即興演奏です。

まずは、26分くらいあるpart1を、最後まで聞いてほしいと思います。聞き出した時点で、引き込まれてしまう人、「え?」と違和感を覚える人、色々だと思います。
ただ、私はやはりこの演奏は素晴らしいと思います。間違いなく、素晴らしい音楽だと思います。

ただ26分と長いため、途中で飽きてしまう人もいるかもしれません。曲を通しての抑揚、メリハリもあるのですが、聴きなれない人にとっては「長い」と感じるかもしれません。
しかし、構成や展開も含めて、即興で26分、これほど美しく力強い演奏を1人で行うキースには、本当に言葉を失います。

マイルス・デイビスのバンドに参加した後、キースは30歳頃ですから、まさに油の乗り切ったときでしょうか。演奏のタッチやフレージングには後の時代と比べて力強さがあり、若さを感じます。
私は、歳をとってからのキースのタッチが、より好きなのですが、若々しいこの時代はまた違った良さを感じます。力強さの中にも、後年にも十分に発揮されるピアニッシモでの繊細な音使いが、この頃から感じられます。

ちなみに『ザ・ケルン・コンサート』をレコーディングした頃、キースがいかに独自の路線を走っていたか分かる作品を一つを上げてみます。

『Death And The Flower(生と死の幻想)』(Impulse!:1975)
KeithJarrett(pf, ss, per) Dewey Redman(ts, per) Charlie Haden(b) Paul Motian(ds) Guilherme Franco(per)

これを聴くと、キースはオーソドックスなジャズを離れた曲目や、オリジナル曲、即興演奏が多く、従来のジャズの範疇に収まらない「変わったピアニスト」であったと言えそうです。
ソプラノサックスも吹き、かなりアバンギャルドな演奏もしています。

キースはアバンギャルドな即興演奏が好きなのかな、とか思ってしまいます。
だけど有名になったのは、メロディアスで抒情的な演奏なわけです。ですがそれはキースの一面であって、他の一面には激しく前衛的な香りがプンプンするのです。